資金調達ノウハウ

日本政策金融公庫(国民生活事業)の融資制度(5)「新創業融資制度」

2016.04.11

新創業融資制度・・・、とても有名な創業者向け制度です。

 

新創業融資制度とは、新たに事業を始める方や事業を開始して間もない方むけに、

無担保・無保証人で利用できる有難い制度です。

 

以下、概略になりますので、先ずは確認してください。

 

<制度概要>

対象者

次の1~3のすべての要件に該当する方

 

1.創業の要件

 新たに事業を始める方、または事業開始後税務申告を2期終えていない方

 

2.雇用創出、経済活性化、勤務経験または修得技能の要件

 次のいずれかに該当する方。ただし、本制度の貸付金残高が300万円以内(今回のご融資分も含みます。)の女性(女性小口創業特例) については、本要件を満たすものとします。

(1)雇用の創出を伴う事業を始める方

(2)技術やサービス等に工夫を加え多様なニーズに対応する事業を始める方

(3)現在お勤めの企業と同じ業種の事業を始める方で、次のいずれかに該当する方

 (ア)現在の企業に継続して6年以上お勤めの方

 (イ)現在の企業と同じ業種に通算して6年以上お勤めの方

(4)大学等で修得した技能等と密接に関連した職種に継続して2年以上お勤めの方で、その職種と密接に関連した業種の事業を始める方

(5)産業競争力強化法に規定される認定特定創業支援事業(注1)を受けて事業を始める方

(6)地域創業促進支援事業(注2)による支援を受けて事業を始める方

(7)公庫が参加する地域の創業支援ネットワーク(注3)から支援を受けて事業を始める方

(8)民間金融機関(注4)と公庫による協調融資を受けて事業を始める方

(9)既に事業を始めている場合は、事業開始時に(1)~(8)のいずれかに該当した方

 

3.自己資金の要件

 事業開始前、または事業開始後で税務申告を終えていない場合は、創業時において創業資金総額の10分の1以上の自己資金(注5)を確認できる方。(注6)ただし、以下の要件に該当する場合は、自己資金要件を満たすものとします。

(1)前2(3)~(8)に該当する方

(2)新商品の開発・生産、新しいサービスの開発・提供等、新規性が認められる方

 (ア)技術・ノウハウ等に新規性が見られる方(注7)

 (イ)経営革新計画の承認、新連携計画、農商工等連携事業計画又は地域産業資源活用事業計画の認定を受けている方  (ウ)新商品・新役務の事業化に向けた研究・開発、試作販売を実施するため、商品の生産や役務の提供に6ヵ月以上を要し、かつ3事業年度以内に収支の黒字化が見込める方

(3)中小企業の会計に関する指針または基本要領の適用予定の方

資金使途 事業計画の実施のために必要とする設備資金及び運転資金
融資限度額 3,000万円(うち運転資金1,500万円)
返済期間 各種融資制度で定めるご返済期間以内
利率

・日本公庫のHPにて確認してください。

(※平成28年4月現在の融資期間18年以内の基準金利は「2.40%」です。)

保証人・担保 原則不要

※原則、無担保無保証人の融資制度であり、代表者個人には責任が及ばないものとなっております。法人のお客さまがご希望される場合は、代表者(注)が連帯保証人となることも可能です。その場合は利率が0.1%低減されます。
(注)実質的な経営者である方や共同経営者である方を含みます。

※平成28年4月現在の概要になります。

 直近の概要は日本公庫HPにてご確認くださいませ。

 

 

さて、これを見てパッと理解できますか?

ちょっと難しいでしょう。

 

よって、ポイントを赤字の下線部分に絞りました。

この箇所を簡潔に解説していきます。

 

 

<ポイント1>

先ずは、「新たに事業を始める方、または事業開始後税務申告を2期終えていない方」

という箇所ですが、この文章の通りです。

 

完全な開業前、又は、2期の申告を終えていない方です。

つまり、2期の申告を終えてしまった方は対象となりません。

 

また、開業前と開業後では、やはり「開業前」の方が有利かもしれませんよ!!

開業後に資金繰りが悪くなって、この制度に申請しても、

それは既に失敗した?ビジネスモデルです。

そのビジネスに融資をしてもらうのは困難です。

 

しかしながら、絶対に無理だ!と言っているわけではありません。

当然、開業後に想像以上に上手くいって、運転資金が必要だというケースだってあるでしょう!!

 

 

<ポイント2>

「本制度の貸付金残高が300万円以内(今回のご融資分も含みます。)

の女性(女性小口創業特例) については、本要件を満たす」についてですが、

この箇所では、「雇用創出、経済活性化、勤務経験または修得技能の要件」について

かかれており、「次のいずれかに該当する方」として、(1)~(9)のことが

書かれております。これについては、各自読んでみて下さい。

 

さて、「本制度の貸付金残高が300万円以内(今回のご融資分も含みます。)

の女性(女性小口創業特例) については、本要件を満たす」とは、

いったいどういうことか??

 

つまり、300万円以内で女性の場合は、

「雇用創出、経済活性化、勤務経験または修得技能の要件」については、

関係ありません!!ということです。

 

いかに女性が優遇されているか、わかりますよね!!

それだけ、現政府が女性を重視しているのがよくわかります。

是非、女性起業家には頑張ってほしいと思っています。

 

 

<ポイント3>

「創業資金総額の10分の1以上の自己資金を確認できる方」についてですが、

創業するのに1,000万円必要である、という場合、その1/10である

「100万円」以上は、自己資金で確認できることが必要である、という意味です。

 

300万円の開業資金が必要な場合は、その1/10である「30万円」ということになります。

 

本制度が始まった当初は、「1/2」要件でした。

その後「1/3」要件に緩和されました。

 

そして、安倍政権になって、「1/10」まで大幅緩和されました。

 

だからと言って、1/10だけあればOKなのか?というと

実務的にはそういうわけではありません。

 

できれば1/3は準備して下さい。

理想をいえば、やはり1/2です!!

 

1/10の大幅緩和については、門前払いをなくすための目的もあったでしょう。

1/3に届かない起業家で新創業融資の申請が出来ない人をなくすための方策の

一つである、という見方もあながち間違っていないと思います!!

 

<参考>

なお、本文の(注)については、以下の通りです。

今回は以下の解説は省略させて頂きます。

 

(注1)市町村が作成し、国が認定した創業支援事業計画に記載された特定創業支援事業をいいます。詳しくは中小企業庁ホームページをご覧ください。

(注2)詳しくは、地域創業促進支援事業管理事務局(株式会社パソナ)ホームページまたは創業スクールホームページをご覧ください。

(注3)詳しくは、支店の窓口までお問い合わせください。

(注4)都市銀行、地方銀行、第二地方銀行、信用金庫または信用組合をいいます。

(注5)事業に使用される予定のない資金は、本要件における自己資金には含みません。

(注6)女性小口創業特例に該当する方も、自己資金要件を満たすことは必要です。

(注7)一定の要件を満たす必要があります。詳しくは、支店の窓口までお問い合わせください。

 

 

<ポイント4>

融資限度額は「3,000万円」となっています。

凄くないですかー!!

 

無担保・無保証人で「3,000万円」ですよ。

しかも自己資金は1/10でよいのです。

 

まるで夢のような制度ですね。

 

だけど、「安心してください!!」、「無理ですよ!!」

 

正直言いまして、日本公庫はそんなお人よしではありません。

3,000万円なんて資金を簡単には貸してくれません。

 

もし可能性があるとしたら「開業医」くらいだと想像いたします。

 

 

<ポイント5>

本制度は「無担保・無保証人」であるということ。

これが如何に、有難い制度であるか、分かりますよね。

 

事業に失敗して返済できなくなっても、お咎めなしです!!

 

そんなことが許されるのでしょうか??

だけど、この制度に限っては許されることになります。

 

だから、簡単に3,000万円なんて融資はしません。

 

 

新創業融資制度は、小口であればあるほど借りやすいと思います。

(300万円~500万円程度か?)

 

もう少し上のラインだとしても、

実務上は1,500万円以内が現実だと感じています。

(できれば1,000万円以内の方が現実的か?)

 

当然ですが、300万円であろうと、3,000万円であろうと、

しっかりとした事業計画を作成してくださいね!!